自動車補修用バッテリーターミナル for Professional
バッテリーターミナルと電線サイズの見方&交換方法
自動車用バッテリー(鉛蓄電池)本体のポールには常時数十アンペア、最大時には数百アンペアという電流が流れており、装着されているバッテリーターミナルは想像を遥かに上回る速さで劣化していきます。また、バッテリー液が液口栓から漏れてバッテリーターミナルを激しく腐食させるケースも見受けられます。
なお、バッテリー本体を新品に交換しても、バッテリー本体のポールに接するバッテリーターミナル自体が劣化していては、接触不良や接触抵抗によって、思わぬ車両トラブルを引き起こす懸念があります。
バッテリーターミナルの選び方(ポールサイズ・製品仕様)
①ポールのサイズ
自動車用バッテリー(鉛蓄電池)の電極はプラス極(太)およびマイナス極(細)から構成され、ポールサイズは大ポール(Dタイプ)と小ポール(Bタイプ)の計2種類があります。
ヒーロー電機のバッテリーターミナルシリーズは、プラスを1・マイナスを2と表示し、DタイプをL・BタイプをSと表記しております。
②配線との接続タイプ
ヒーロー電機のバッテリーターミナルシリーズには「圧着タイプ」、「変換タイプ」、「ボルトタイプ」、「マルチ型タイプ」の計4種類があります。
圧着タイプのバッテリーターミナルは、バッテリーターミナルに直接電線を通し、圧着工具(簡易圧着工具(品番:D-19N/D-20N)、および油圧式圧着工具(品番:EP-150A))を用いてターミナルと電線を圧着により直接接続し、バッテリー(鉛蓄電池)本体に装着します。
変換タイプは車両側の圧着タイプのバッテリーターミナルを一切取り替えることなく、そのまま使用することが可能な<アダプター>の役目を果たします。
ボルトタイプ、マルチ型タイプの各バッテリーターミナルは、丸形端子(DRシリーズ)を併用してバッテリー(鉛蓄電池)本体に装着します。
③無酸素銅(OFC)バッテリーターミナルの材質について
バッテリーターミナルの本体素材には、酸化物を含まない一般的な銅に比べて高純度、且つ高い導電性を兼ね備え、電子機器や電線などに広く採用されている「無酸素銅(OFC)」を自動車補修用バッテリーターミナルとして業界初採用。
※画像はイメージです。
※素地(メッキ無し)の状態では販売しておりません。
無酸素銅(Oxygen Free Copper)とは
純度99.96%以上の高純度な銅
無酸素銅は、他の元素や不純物・酸素を極限まで取り除いた純粋な銅となり、一般的な銅に比べて純度が非常に高くなっております。
高い導電性
無酸素銅は、高い電気伝導性を持ち、電子機器や電線、導体などの製造に広く使用されております。高い電気伝導性は、電気信号を効率的に伝えることができます。
参考資料1 バッテリーターミナル用の素材として一般的に採用される各種素材の導電性 比較一覧
比較素材 | 無酸素銅(OFC) (当社製品採用素材) | 黄銅(真鍮・ブラス) | 亜鉛合金ダイカスト | 鉛 |
---|---|---|---|---|
素材導電率(IACS) | 101% | 28% | 26% | 9% |
※1. IACSとは電気抵抗の基準として国際的に採用された焼鈍(アニール処理された)標準軟銅のことで、導電率100%IACSと規定されています。
※2. 上記数値は一般参考値(目安)であり、絶対値(保証値)ではありません。
(※注) Cu-Zn合金は黄銅(おうどう)、真鍮(しんちゅう)、ブラス(brass)とも呼ばれますが、学術用語は「黄銅」です。
(引用文献):大沢直.図解入門 よくわかる最新「銅」の基本と仕組み.秀和システム、2010、 p.106、(秀和システム).
【ポイント】イラスト図解でひと目でわかる導電率
「導電率」 は 〈 道幅 〉 で例えることができ、車同様にスムーズな流れの方がより高効率です。
再生可能エネルギー発電、電気自動車などをはじめとした、持続可能な脱炭素社会の実現をさせるための重要な素材となる「銅」
■再生可能エネルギー発電
銅は再生可能エネルギー発電システムにおいて重要な素材です。太陽光発電や風力発電などの設備には大量の銅配線が必要であり、電気を効率的に伝導する性質が重要です。銅の高い導電性と耐久性は、再生可能エネルギー発電の効率と持続可能性を高める役割を果たします。
■電気自動車と充電インフラ
銅は電気自動車(EV)の製造においても欠かせない素材です。EVのモーターやバッテリー、充電インフラには大量の銅が必要とされます。高い導電性と耐久性により、銅はEVの性能と効率性を向上させる役割を果たします。
■電子機器
銅は電子機器の製造においても重要な素材です。コンピューター、スマートフォン、テレビなどの電子機器には銅配線が使用されています。また、銅は熱を効率的に伝導するため、電子機器の冷却材としても利用されます。高性能な電子機器が脱炭素社会においてますます重要となる中、銅はその需要の一部を支える役割を果たします。
バッテリーターミナルの選び方(製品の構造・JIS規格に基づく振動試験)
素材の肉厚化・スリットレス構造
自動車エンジンルーム内における苛酷な使用環境下において、バッテリーターミナルとしての信頼性と堅牢性の両立を至上命題とすべく、素材自体の肉厚化ならびに製品本体への切り込みや割れ目がないスリットレス構造を基本仕様とすると共に、ヒーロー電機がこれまで培ってきた技術やノウハウを構想段階より反映させ、自社製品開発を実施。
開発コンセプト | 開発コンセプトの背景(理由) |
---|---|
素材の肉厚化 |
|
スリットレス構造 |
|
無酸素銅(OFC)タイプバッテリーターミナル 肉厚検証
製 品 | 板厚 | |
---|---|---|
圧着タイプ | DCPLシリーズ | 1.8 mm |
DCPSシリーズ | 1.5 mm | |
ボルトタイプ | DTPLシリーズ | 1.8 mm |
DTPSシリーズ | 1.5 mm | |
変換タイプ | DXLシリーズ | 1.8 mm |
DXSシリーズ | 1.5 mm | |
マルチ型タイプ | DMPLシリーズ | 1.8 mm |
DMPSシリーズ | 1.5 mm |
【参考】スリット入りバッテリーターミナル 実使用例検証
スリット(切り込みや割れ目)は物体や構造物の強度が低下する場合があり、外部からの力や負荷がスリットにかかると、その部分が弱くなり、ひび割れや破壊が生じる可能性が高くなります。
なお、自動車から発生する振動などによって亀裂が入ったスリット入りバッテリーターミナルは、「接触不良」や「接触抵抗」の増加などによる電圧低下によって、予期せぬ車両トラブルを引き起こす懸念があります。
JIS規格に基づく「振動試験」の検証(試験材料:DTPL・DTPS)
【振動試験機全体像】
品番をクリックすると製品詳細ページが開きます
タイプ | 品番 |
---|---|
圧着タイプ | DCPL60-1 |
DCPL60-2 | |
DCPL38-1 | |
DCPL38-2 | |
DCPS22-1 | |
DCPS22-2 | |
ボルトタイプ | DTPL-1SK |
DTPL-2SK | |
DTPL-1S-24K | |
DTPL-2S-24K | |
DTPL-1S | |
DTPL-2S | |
DTPS-1SK | |
DTPS-2SK | |
DTPS-1S-24K | |
DTPS-2S-24K | |
DTPS-1S | |
DTPS-2S | |
変換タイプ | DXS_SET |
DXS_PEAR_SET | |
DXL_SET | |
DXL_PEAR_SET | |
マルチ型タイプ | DMPL-1 |
DMPL-2 | |
DMPS-1 | |
DMPS-2 |
無酸素銅(OFC)バッテリーターミナル 製品ラインナップ
写真 | 仕様 | 品番 | 規格 ・ 仕様 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ポール | 適用 | 極 | 材質 | 表面処理 | |||
圧着タイプ | DCPL60-1 | 大ポール (Dタイプ端子) |
圧着部内径 12.5φ 適用電線 60.00mm2 |
(+)極用 | 無酸素銅 (OFC) |
スズメッキ | |
DCPL60-2 | 大ポール (Dタイプ端子) |
圧着部内径 12.5φ 適用電線 60.00mm2 |
(-)極用 | ||||
DCPL38-1 | 大ポール (Dタイプ端子) |
圧着部内径 9.4φ 適用電線 38.00mm2 |
(+)極用 | ||||
DCPL38-2 | 大ポール (Dタイプ端子) |
圧着部内径 9.4φ 適用電線 38.00mm2 |
(-)極用 | ||||
DCPS22-1 | 小ポール (Bタイプ端子) |
圧着部内径 7.7φ 適用電線 22.00mm2 |
(+)極用 | ||||
DCPS22-2 | 小ポール (Bタイプ端子) |
圧着部内径 7.7φ 適用電線 22.00mm2 |
(-)極用 | ||||
ボルトタイプ | DTPL-1S | 大ポール (Dタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用 | |||
DTPL-2S | 大ポール (Dタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (-)極用 | ||||
DTPS-1S | 小ポール (Bタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用 | ||||
DTPS-2S | 小ポール (Bタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (-)極用 | ||||
DTPL_24K_SET | 大ポール (Dタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用(ー)極用で1組 | 24Kメッキ (金メッキ) | |||
DTPS_24K_SET | 小ポール (Bタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用(ー)極用で1組 | ||||
マルチ型タイプ | DMPL-1 | 大ポール (Dタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用 | イオニスコート/SK | ||
DMPL-2 | 大ポール (Dタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (-)極用 | ||||
DMPS-1 | 小ポール (Bタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (+)極用 | ||||
DMPS-2 | 小ポール (Bタイプ端子) |
縦ボルト部 M8 | (-)極用 | ||||
変換タイプ | DXL SET | 車両側のバッテリーケーブル端子が小ポール(Bタイプ端子)用で、乗せ替えるバッテリーの端子が大ポール(Dタイプ端子)の場合に使用する変換端子です。 | (+)極用(ー)極用で1組(5組/箱SET) | 【本体】無酸素銅(OFC) 【スリーブ】黄銅 |
スズメッキ | ||
DXL_PEAR_SET | (+)極用(ー)極用で1組 | ||||||
DXS SET | 車両側のバッテリーケーブル端子が大ポール(Dタイプ端子)用で、乗せ替えるバッテリーの端子が小ポール(Bタイプ端子)の場合に使用する変換端子です。 | (+)極用(ー)極用で1組(5組/箱SET) | |||||
DXS_PEAR_SET | (+)極用(ー)極用で1組 |
④ボルトタイプのバッテリーターミナルに適合する丸形端子
ボルトタイプのバッテリーターミナルに丸形端子を装着する場合には、バッテリー本体側の縦ボルトサイズ、および丸形端子の適合ボルト穴径を確認の上、丸形端子を装着いたします。
品番をクリックすると製品詳細ページが開きます
クローズドバレル丸形端子
品番 | 電線抱合範囲[撚線](mm2) |
---|---|
DR8-8-24K | 6.64~10.52 |
DR14-8-24K | 10.52~16.78 |
DR22-8-24K | 16.78~26.66 |
⑤電線の太さ
AV電線のサイズは、電線を構成している銅線一本一本(素線)を撚って束となった導体部分(芯線)の合計断面積で表します。単位はmm2、または英語表記の「Square Millimeter(スクエア ミリメートル」を略し「sq(スクエア または スケア)」と表記します。(mm2 = sq)
したがって芯線の直径(導体外径)、または被覆を含む電線の直径(仕上り外径)ではありません。
バッテリーケーブルの太さは一般的に14sqから60sqの幅があり、それぞれに適合したターミナルを選びます。
無酸素銅(OFC)バッテリーターミナル(ボルトタイプ)の交換方法
手順1 バッテリーターミナル含め必要となる部材を用意する
手順2 バッテリーターミナルを外す
手順3 電線をカットする
手順4 端子の圧着と準備
手順5 熱収縮チューブで圧着部を保護(熱収縮チューブを使用する場合のみ)
手順6 バッテリーターミナルを元に戻す
バッテリー(鉛蓄電池)のポールへ取り付ける際のワンポイントアドバイス
(上記イラストはボルトタイプ仕様)
- バッテリー(鉛蓄電池)のポールに無酸素銅(OFC)バッテリーターミナルを押し込む。
- ポイントAが反対側の面に当たるまでM6ナットを締め込む。
- 更にM6ナットを締め込むことにより、ポイントAが支点となりバッテリーターミナルがバッテリー(鉛蓄電池)のポールを締め付けます。(支点の作用により、バッテリーターミナルがしっかりと固定されます)
- 取付直後は緩みがないかを確認
- 定期的に緩みがないことを確認
YouTube(プロが教えるバッテリーターミナルの交換)
(YouTubeチャンネル「メカニックTV」様 掲載許諾済)
無酸素銅(OFC)バッテリーターミナル(変換タイプ・DXL)の使用方法(動画)
ターミナル取付時には必ず装着するバッテリーのポール部に異常がないかご確認ください。また、バッテリー液には必ず触れぬようお願いします。 |